マフラーの消音加工

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バイクのマフラーを交換すると、排気音が変わって気分が高まる一方、音量が大きくなりすぎるケースもあるのではないでしょうか。そこで注目されるのが「消音加工」です。バッフルを取り付けたり、パンチングやグラスウールを使ったりして、自分好みの音質と音量に仕上げる方法があります。ここでは、サウンドカスタムにおける消音加工の基礎知識をご紹介します。
消音加工が求められる理由
マフラーをカスタムすると、純正に比べて排気音が高くなる場合が多いです。ライダー本人には迫力あるサウンドが楽しいかもしれませんが、周囲への騒音や法規制を考えると、そのままでは問題が生じるケースもあります。夜間や住宅街で走る際に近所迷惑になったり、車検に通らない恐れがあったりするため、適切な音量に落とす「消音加工」が重要なのです。
騒音規制が厳しい地域やサーキットを利用する際にも、消音対策が必須となることがあります。車検制度では、車両の排気音が基準値を超えると不合格となるため、せっかくのカスタムマフラーが無駄になってしまわないようにするためにも、サウンドカスタムと消音加工の両立を考える必要があるといえます。
バッフルの役割
消音加工の方法のひとつが「バッフルの取り付け」です。バッフルとは、マフラー内部の排気通路を狭めたり、流れを複雑にしたりする部品のことです。単純に「音量を下げる蓋」というイメージを持たれることが多いですが、実際には排気の流れを制限して音圧を下げる役割があります。
純正マフラーにも、メーカーが最適な排気効率と音量を両立するための工夫がなされています。しかし、市販のカスタムマフラーではあえて排気効率を優先し、音量を大きくする設計が盛り込まれがちです。そのままでは音がうるさすぎる場合に、別途バッフルを追加して調整する方法が取られます。
バッフルは差し込み式でボルト固定するタイプが一般的です。数分で装着や取り外しができるため、車検や深夜の街乗りのときはバッフルをつけ、サーキットやイベントのときだけ外すというライダーもいます。ただし、取り外し・交換を頻繁に行うと、ネジ穴の摩耗などが起こる場合があるため、メンテナンスはこまめに行うとよいです。
パンチングとグラスウールの仕組み
マフラー内に「パンチング」と呼ばれる穴あきパイプを組み込み、その周囲にグラスウールなどの吸音材を巻きつける方法も代表的な消音加工です。以下、簡単に仕組みを解説します。
パンチングパイプ
穴が多数空いたパイプで、排気ガスがパイプの穴からグラスウールに当たることで音を吸収しやすくします。穴の大きさや数によって音の抜け方が変わり、排気効率と消音性能をバランスさせるのが設計のポイントとなります。
グラスウール
繊維状のガラス素材で、吸音材として使われます。高温になった排気を直接受け止めるため、耐熱性や寿命にも注意が必要です。使い続けるうちに劣化し、ボロボロになってしまうことがありますので、定期的な点検や交換が求められます。
パンチングパイプとグラスウールを組み合わせると、排気音がパイプ内で拡散・吸収されるため、音圧を低減する仕組みが成立します。しかし、これによって排気抵抗も増すため、パワーダウンを懸念する人もいます。実際に少しパフォーマンスが下がることはあるかもしれませんが、適切に設計されたものなら大きな問題にはなりにくいです。
消音加工を施す際の注意点
法的基準の確認
排気音の大きさには道路運送車両法などで規定が設けられています。消音加工をしていても、基準値を超える音量であれば違法となります。自分のバイクがどの程度の音量かを測定するには、音量計をレンタルしたりショップに相談するとよいでしょう。
熱対策
マフラー内部の温度は非常に高いです。バッフルやグラスウールを取り付ける際、固定が不十分だと走行中に外れてしまうリスクがあります。耐熱ボルトや専用の固定具を使い、走行中に振動で緩まないように注意してください。
車検への対応
車検時に音量測定が行われますが、音以外にもマフラーの形状や触媒の有無などの基準が絡む場合があります。車検対応マフラーであっても、過度な加工をすると認可範囲外となることがあるため、作業前にショップや専門家に確認すると安心です。
メンテナンスの頻度
グラスウールは定期的に交換が必要です。経年劣化で吸音性能が下がると、また大きな音が出るようになります。走行距離や使用環境によって交換時期は変わりますが、定期的な点検が好ましいです。
カスタムと静音の両立は可能か
「マフラーを交換してパワーアップしたいけれど、音は静かめにしたい」という要望は少なくないです。完全に静音化するとパフォーマンスが落ちるケースもありますが、近年はエンジニアリングの進歩により、低音で迫力を保ちつつ法規制をクリアするマフラーが増えています。
また、ユーザー側でバッフルやグラスウールを調整すれば、自分の求める音量と音質に近づけることが可能です。気をつけたいのは、「音を消しすぎるとエンジン熱がこもりやすくなる」「排気抵抗が増す」という点でしょう。バランスを見極めつつ、適度に消音加工を施すのが理想です。
自作かプロへ依頼か
消音加工を自作する人もいますが、正確な加工や適切な材質選定ができないと、思ったように消音できなかったり、逆に音量が変わらなかったりすることがあります。溶接の技術や排気ガスの流れへの理解が必要なので、工具や知識に自信がない場合はプロに依頼するのが無難です。バイクショップやマフラー専門店に相談して、自分の好みと法規制を両立するようカスタムを提案してもらうと安心できます。
消音加工で楽しむサウンドカスタム
マフラーの消音加工は、排気音を単に抑えるだけでなく、音質のチューニングとしても楽しめます。低音を強調したい、甲高い音をやわらげたい、などの要望に合わせてバッフルやグラスウールを調整することで、個性的なサウンドを実現できます。しかし、周囲への配慮と法規制への適合が大前提です。
消音加工を施したうえで適正な音量を保ちながら走ると、ライダー自身が落ち着いて運転できるだけでなく、周囲の人からの理解も得やすくなります。安全や快適性を損なわない範囲で、バイクのサウンドカスタムを楽しんでくださいね。